理想のバスルームとは?

前回のバスルームの未来について
もう少し、考えてみましょう。

もしも、あなたが旅先の宿で
理想の浴室に出会ったとすれば、
それは、どんなバスルームでしょうか?

私なら、「くつろぎ」と「癒し」があるバスルームです。

せわしい日常から離れて羽を休め、
心地よい眠りの時間へと続く、
自分と向き合う濃密な体験であってほしいと思います。

例えば、天草にある「五足のくつ」のヴィラ。
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小高い丘から八代湾を望みながら遠い潮騒を聴き、
源泉かけ流しの露天の岩風呂に身を委ねて、
ブルガリのアメニティのすがすがしい香りを感じつつ、
満点の星空の中をつたう、降り注ぐ流れ星を眺める深夜の瞬間。
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そんな体験を得るためには、デジタルの導入は
最低限で良いのかもしれません。

例えば照明なら、LEDでなくても、
暗い室内の一角にアロマキャンドルを灯すほうが
心が休まります。

また、マッサージやハンドマニキュアを愉しむなら、
寝室から少し小径を歩いたスパにある
眺めの良いエステルームで、ベテランの技によるセラピーを
受けてみたいと思います。

一方、
「旅先のバスルームでは素敵な体験を求めても、
自宅のバスルームは、アクティブな自分を後押しする場にしたい」

という方もいるかも知れません。

人の心は、きまぐれです。
バスルームの空間で
リラックスしたいかと思えば、
リフレッシュしたいと思い、
時には自分を奮い立たせたくなるのです。

自宅のバスルームに求めたい機能は、
日によってさまざまです。

だからといって、イアン=ピアソン博士が提案するような、
ハイテクを駆使しあらゆる「便利」が盛り込まれたバスルームは、
あまり素敵ではありません。

理想のバスルームを考えるにあたっては、
空間のコンセプト
、すなわち、
体験をデザインすることが大事になってくると思います。

言い換えると、ぶれない軸を持って、
なにかを捨てる」ことと言えます。

「バスルームの未来」は、どうなる?

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SF小説を読んでいると、未来のテクノロジーや人々の暮らしが
ありありと描かれていて、それらが後の人々に影響を与え、
研究開発が行われ、実現することがあります。

未来学者、イアン=ピアソン博士によると、
居室空間の一角を占めるバスルームは、
今後、大きく様変わりをするといいます。

例えば・・・

【今後10年以内に】

  • 浴室内のスマートミラーが健康チェックとあわせ、
    髪型やスタイリングの
    提案をしてくれるようになる
  • 浴室内のスマートミラーは、ミリ単位の薄さの
    ディスプレイを
    インターネットにつないであり、
    高解像度カメラを内蔵したものになっている
  • 浴室内のスマートミラーで撮影された映像を
    医師が活用するようになり、病気診断のための
    虹彩スキャンが可能となる

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  • 浴室内のスマートミラーの中には、
    ユーザーの吐く息を分析し、
    健康状態を診断する
    化学センサーを持つものも登場する
  • 浴室内のスマートミラーに映るアバターを使って、
    仮想のコーディネートを試したり、新しい
    メイクアップ製品やヘアケア用品、
    ジュエリー、
    洋服を試着できるようになる

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  • ユーザーの「なりたい外見」を叶えるために、
    浴室内のスマートミラーが
    メイクアップの塗り絵機能を
    持つようになる
  • 壁面、床面のタイルがスピーカー機能を持つようになる
  • 床面タイルの一部またはカーペットが、
    体重計の機能を持つようになる

【今後25年以内に】

  • グラフェン(炭素の一種)でできた電子回路を
    肌の上につけたり、
    皮膚細胞に埋め込む
    「アクティブスキン」が一般化されるようになる
  • メイクアップはスマート化され、顔にクリームを
    塗ることによって
    皮膚に適用した電子回路が
    アクティブになり、
    鏡の中のアイコンをタップすると
    顔のパーツを識別して
    顔の上に自動でメイクアップを表示してくれる
  • バスルームお掃除ロボットが、マッサージや
    マニキュア等の
    サービスを施してくれる
  • アロマとマイナスイオンを帯びた空調が、
    バスルームの悪臭や
    バクテリア、花粉を取り除くようになる
  • バスルームの壁面がポリマースクリーンとなり、
    いつでも模様変えが
    できるようになる

今から25年前といえば、1991年です。
まだ、パソコンもインターネットも普及していませんでした。
当時の模様に思いをはせると、隔世の感があります。

同様に、これからの25年間も、大きく暮らしは変わりゆくのでしょう。

生産者の方々にとっては、このような未来予測は
経営の参考情報になるかも知れません。

しかし、こんな「便利が満載された」未来の浴室に、
私たちはワクワクしたり、リラックスしたりすることができるでしょうか?

ストレスと戦うメガネ

通りがかりのショッピングモールで、

眼鏡ショップの店頭に、気になるポスターを発見。

ストレスと戦うメガネ

と書かれています。

よく読んでみると、

「ブルーライト対策メガネ」

の広告でした。

ポスターには、

「ブルーライトをどれだけカットできるか」

ではなく、

ブルーライトをカットした結果、あなたに起こることは?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

をうたってあります。

高度な技術を使った商品ほど、

機能・性能を伝えたくなるでしょう。

だって、苦労して編み出したわけです。

でも、エンドユーザーの心が動く一言は、そこではないんですね。

その機能を手に入れたときに、どんな幸せが起こるのか?

なのです。

この「目線の切り替え」が、

エンドユーザーに対する本当の愛だと思います。

丁寧に向き合う

ワーキングホリデーをオーストラリアで過ごした知人の話によると、
向こうで暮らして初めて、

日本人の「当たり前」が実は、「当たり前ではない」

ことに驚いたそうです。

特に意外だったのは、
折り紙の端と端をきっちりと揃えて折れない(折らない)
ということだったようです。

日本人は手先が器用だ、という話を耳にしますが、
折り紙の端と端をそろえる、という行為は、
やり方を知って、意識さえすれば、
そんなに難しいことではないと思います。

手先の動きを細やかに丁寧に折り進めば、
必ず美しい折り紙が仕上がります。

仕事も、折り紙と似ていると思います。
どんな作品ができるかははじめはイメージできなくても、
一つひとつの仕事を丁寧に、細やかに仕上げていけば、
きっと美しいエンディングが待っている。

だから、面倒なことほど、
心を切り替えて丁寧に向き合いたいものです。

「日本らしさ」で、世界の役に立つ

世界がグローバリズムをつきつめ、
自らの発展で自らの危機を招いている今、
日本の持っているものが役に立つのでは、と
強く感じています。

それは、日本の精神文化です。

例えば、「和をもって貴しとなす」。
あらゆるステークホルダーと
良好な信頼関係を築きます。
時には競合と手を携えて、
イノベーションを起こします。

例えば、「三方よし」。
事業に関わる、あらゆる人々に
恩恵と発展をもたらします。

例えば、「足るを知る」。
これ以上、モノを増やさなくても、
キャッシュがまわるビジネスの仕組みをつくります。

例えば、「侘びの精神」。
思いつく限りの行動で相手をもてなし、
それでも行き届かない自分を詫びることで、
相手への尊敬の念を伝えます。

例えば、「不易流行」。
時代とともに、変えていくものと守っていくものを持ち、
伝承していきます。

これは、あくまで一例に過ぎません。
西欧のグローバルスタンダードにない価値観が、
日本には、たくさんあるのです。

このような思想が根底に流れる
「ものづくり」「ことづくり」を、
世界が待っています。

日本人のひとりとして、そのような
長年この国が培ってきた共生共存の経営を自ら実践し、
発信していかなくては・・・と強く思います。

「より安く」「より早く」「より便利に」を疑う

グローバルスタンダードの「ものづくり」は、
技術進歩を加速させ、経済を刺激しました。

また、資源や労働力が豊富な新興国の発展も、もたらしました。

そのような経済成長は確かに、これまでは、
必要とされるもの応えようとする、
誠実な努力の形だったかのも知れません。

しかし、このままの勢いで
世界中の国々が経済成長を続けると、
どうなってしまうでしょうか。

地球の資源は枯渇し、汚染され、
ロボットにとってかわられた人々が失業し、
消費が冷え込み、健康被害が増え、
社会保障費は増え、
食糧や燃料がいきわたらない・・・

やがて、資源を巡って
紛争や戦争が繰り広げられる。

予想される、暗いシナリオです。

2050年には、
世界の人口は97億人になるといわれています。

この問題は、政治力だけでは解決しないでしょう。
小さな力でも、私たち自らの行動を変えていかなくては、
次の時代を幸せなものにすることはできません。

「より安く」「より早く」「より便利に」と、
同じ路線で経済活動をしていては、
この問題は解消しないのです。

限りある資源を大切にし、わかちあう。
自然との、共存の形を探る。
今こそ、新しいパラダイムへのシフトが必要です。

技術開発の背景にあるDNAの違い

現代の、とどまるところを知らない技術開発の進化は、
自然に対して人間が「手を加えること」によってこそ価値が生まれる・・・
という西洋哲学が根底に流れていることについて、
以前のブログで書きました。

そして、そのような技術のあくなき進化は、必ずしも
人の幸せをもたらすものになっていない
、とも書きました。

このままいけば、多くの人にとって
幸せも豊かさももたらさない技術開発が行われ、
やがては自然環境を破壊し、
人々の暮らしを破壊し、
「見えないもの」を大切にするという、
人の心の豊かさを破壊するのかも知れない。

そのように考えていたころ、
日経テクノロジーオンラインに、
興味深い取材記事が紹介されていました。

日本の家電メーカーが凋落した理由
アレックス社長、辻野 晃一郎氏に聞く | 日経テクノロジーオンライン

世界最高の性能と品質を実現した
日本の家電メーカーが、かくも凋落したきっかけは、
「インターネット」の出現にある、と辻野氏は語ります。

インターネットが存在しなかったオフラインの時代、
日本は耐久財だった家電の性能と品質にこだわり、
「メードインジャパン」という信頼のブランドを築き上げ、
多少高くても製品を買ってもらえる状況がありました。

しかし、インターネットがすべてを変えてしまった、
と辻野氏は言います。

インターネットが普及した後は、
発売の初期段階では品質にこだわらなくても、
ソフトウェアがインターネット経由で
アップデートできるようになりました。
だから、市場に出た後に製品が「進化」するのです。

日本のものづくりは、オフラインの時代に強みを発揮しました。
工場から出荷する段階で、完璧さを要求されたからです。
しかし、コンプライアンスを過度に気にかけ、
このスピードに対応しきれないため、今、
凋落の危機に瀕しているのではないか、
というのです。

また、辻野氏はGOOGLEでの仕事を通じて、
意思決定のスピードや企業トップのフットワークの軽さが
圧倒的であることに気づきます。

まさに、インターネットの時代に対応した組織運営が、
そこにはありました。

話は、戻ります。

日本のものづくりにおける経営は、
まるで農耕民族的です。
自然に寄り添うように地を耕して種を植え、
祈りとともに大切に育み、収穫の時を迎える。
長老のもと、根回しと和を大切にする。

一方、今のインターネットの時代に
隆盛を誇っているのは、
狩猟民族型の経営です。
必要な人間でチームを組み、
エサや罠を仕掛けて獣を待ち伏せ、追う。
狩りの中では、意思決定を素早くしないと、
獲物に逃げられてしまいます。

日本においても、社内公用語を英語にしたり、
雇用を流動化したり、能力主義の考課を導入したり、
といった試みは、盛んになされています。
しかし、農耕民族はどこまでも、農耕民族なのです。
付け焼刃的に、狩猟民族になることはできません。

日本のものづくりが岐路に立たされている理由の一つには、
農耕民族と狩猟民族のDNAの違いを知らないまま、
この戦いに巻き込まれているということがあるのではないでしょうか。