シャネルのライバルが遺した「女性のための12カ条」とは?

20世紀を代表するクチュリエのひとりであるエルザ・スキャパレッリは、
1890年にローマの裕福な家に生まれ、ローマ大学で哲学を専攻し、
20世紀のふたつの世界大戦の間にニューヨークとパリで活躍しました。

Elsa Schiaparelli (1890–1973)
Elsa_schiaparelli_1937

スキャパレッリは、アートとファッションの融合に傾注した人です。
シュールレアリズムの巨匠であるサルバドール・ダリや
文豪のジャン・コクトーらとの交流が深く、
ダリが描いたロブスターの大きな絵が入ったシルクドレスや、
ハイヒールのかたちをした帽子などをデザインしました。

女性飛行士のための服もつくりました。
当時のアヴァンギャルド・モードを切り開いた人でした。
彼女は、パリのメゾンを代表するシャネルの創設者、
ココ・シャネルの不滅のライバルでもありました。

第二次大戦中はニューヨークに住まいを移し、
創作活動を中止します。
終戦後、パリにメゾンを復活させたものの、
クリスチャン・ディオールのニュールックがモードを活気づけると、
彼女は次第に活躍の場面を失います。

1954年にスキャパレッリはパリのメゾンをたたみ、
「ショッキング・ライフ」 という自伝を書きました。

その中には、「女性のための12カ条」という、
歯に衣を着せないアドバイスが書かれています。

今日は、その内容をご紹介します。

女性のための12カ条(a list of 12 commandments for women)」

①たいていの女性は自分自身について知らないので、務めて自分を知ること。
Since most women do not know themselves, they should try to do so.

②高価なドレスを買ってころころと変える人は、しばしば悲惨な結果を招くもので、浪費家の馬鹿者です。
A woman who buys an expensive dress and changes it, often with disastrous result, is extravagant and foolish.

③ほとんどの女性は(そして男性も)、色に関して鈍感です。みな、忠告を自ら求めて耳を貸すこと。
Most women (and men) are colour-blind. They should ask for suggestions.

④女性のうち2割は劣等感というコンプレックスを持ち、7割は幻想を抱いています。
Remember, 20 percent of women have inferiority complexes, 70 percent have illusions.

⑤9割の人たちが目立つことや他人からのひと言を恐れていて、グレーのスーツを買うのです。みな、勇気をもって、それぞれの装いをすること。
Ninety percent are afraid of being conspicuous, and of what people will say. So they buy a gray suit. They should dare to be different.

⑥女性は的を得た指摘やアドバイスを積極的に求めて耳を貸すこと。
Women should listen and ask for competent criticism and advice.

⑦服を選ぶときは一人で選ぶこと。あるいは、男性に同行してもらって選ぶこと。
They should choose their clothes alone or in the company of a man.

⑧決して、他の女性と買い物に行くものではありません。
 女性は時に、意識的あるいは無意識的に、同性に対して嫉妬しがちだからです。
They should never shop with another woman, who sometimes consciously, and often unconsciously, is apt to be jealous.

⑨女性は、ほんの少しだけ、最高の服か、最安の服だけを買うこと。
She should buy little and only of the best or the cheapest.

⑩身体に合った服を選ぶのではなく、服に合わせた身体をつくること。
Never fit a dress to the body, but train the body to fit the dress.

⑪女性は、自分のことをよく知っていて尊敬してくれる1カ所で買い物をすること。
 そして、次々とやってくる新しい流行に踊らされないでいること。
A woman should buy mostly in one place where she is known and respected, and not rush around trying every new fad.

⑫女性は、自分のお金で服を買うこと。
And she should pay her bills.

スキャパレッリは、当時の女性に対する美意識や自立心のなさに
随分と不満だったのでしょう。

産業革命の時代に、ファッションは
王侯貴族のものから新興富裕層のものとなりました。
また、女性が社会的に進出する時代のあかつきでもありました。
そのため、ファッションという新しい自由と
うまくつきあえなかった女性たちが多かったのかも知れません。

スキャパレッリが活躍した時代から100年を経た現在、
ファッションは当時よりももっと自由なものとなりました。
どんなイメージの服を着ても自由。冬場に夏服を着てもいい自由。
街や民族に、統一性のある装いが求められない自由。
だからこそ、一人ひとりのファッションへの向き合い方が、
あからさまに見える時代になったのです。

スキャパレッリの12カ条は、今も私たちに
「自分なりの、ファッションとの向き合い方を考えなさい」
というメッセージを送り続けているような気がします。

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