ユニバーサルデザインとインクルーシブデザイン③

すべての人にとって使いやすく便利なユニバーサルデザイン(UD)。
暮らしの負担を取り除き、よりストレスの少ない体験を
提供してくれました。

しかし、UDの背景になっている
「すべての人に使いやすく便利なようにしてあげたい」
という思いやりの気持ちは、なかなか伝播してはいきません。

作り手と使い手が「より便利なもの、より使いやすいものを・・・」
と追求していくスパイラルは、意識をしない限り、
とどまるところを知りません。
より便利で使いやすいモノに囲まれた暮らしに慣れて、ついつい、
「このぐらいの便利さは当たり前」という気持ちになってしまいます。

それでも、消費者が自らの「行動」を変えるきっかけを与えた、
あるデザインの取り組みがあります。

1980年代、ニューヨーク。

年に2,000件の殺人、60万件を超える重犯罪が起こっていました。

旅行者は、ニューヨークの地下鉄に絶対に乗ってはいけない、と
言われていました。

無法地帯となっていたこの大都会を、
みんなが安心して過ごせる街にしようと
ニューヨークが街を挙げて取り組んだことは、

①鉄道車両の徹底的なおそうじ

数十億ドルの予算を費やして、
車両およそ6,000台の内装や外装に書かれた
落書きを丹念に消していきました

②新型鉄道車両の導入

明るい車内、汚れが目立ちにくい床、そして
落書きを落としやすい内装に変更しました
(ちなみに、車両デザインは工業デザイナー宇多川信学氏が担当)。
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③無賃乗車の撲滅

無賃乗車をする無法者を警官が捕らえ、
市民に見えるように摘発専用バスに連行して逮捕していきました。

だったのです。

これらは一見、効果の薄い遠回りな施策に思えますが、結果・・・

1990年代の終わりには、ニューヨークの地下鉄で起こる犯罪は、
75パーセントも減少したそうです。

「大きな犯罪の呼び水」といわれる軽犯罪は、
きれいな環境では決行しにくいという人々の心理を読んで、
ニューヨークの犯罪撲滅作戦は見事に成功したのでした。

清掃も、人の行動を律する「デザイン」のひとつなのです。

そして、美しい環境、美しいデザインに囲まれると、
人はより良い自分であろうとするのです。

デザインは、人の意識や行動、
そして習慣を変えてしまうのです。

「ユニバーサルデザインとインクルーシブデザイン③」への2件のフィードバック

  1. デザインの便利さという「機能」と、デザインが作り出す「空間」について改めて考えさせられました。

    コモディティ化して、当たり前になってしまった機能に人は目を向けなくなります。デザインが作り出す「空間」が大切なものを取り戻してくれるといいなぁって思いました。

    そんな商品って、どんなものでしょう。

    1. あみちゅうさん、デザインがもつ可能性に共感くださって、ありがとうございます。

      デザインの中に作り手が込めた「商品・サービスを通じて、世の中がこうなってほしい」という願いは、ディティールを通じて、いつかきっと使い手に伝わると信じています。

      そんな商品・サービスがたくさん芽吹く世の中がくるといいですね。

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