ユニバーサルデザインとインクルーシブデザイン①

いまや馴染み深くなったモノの中には、
障がい者にも利用しやすく、
設計に配慮した製品が多数あります。

電動ハブラシ
温水洗浄便座
ドアのレバーハンドル
ステップバス
・・・

他にも、
ウェブサイトに配置された「文字サイズを変えられるボタン」
一目で操作がわかるアイコン
多言語翻訳システム
音声入力システム
・・・など、いろんなところで配慮を見かけます。

ユニバーサルデザインの考え方で生み出されたこのような工夫は、
私たちの暮らしを心地よく便利にしてくれています。

「すべての人にとって使いやすいデザイン」
を追求するユニバーサルデザイン。
1985年にアメリカで、この考え方が提唱されました。

建築家、デザイナー、そして教育者だったロナルド・メイス氏は、
足に重度の障がいがあり、車椅子で生活をしていました。

彼は、そんな自らの体験を通じて、
「一般の人と同じことをするのに特別な扱いをされたり、
気を遣ったりしなければならないのはおかしい」
と疑問を感じます。
そして、すべての人にとってアクセスしやすい
居住空間の研究を続けました。

70年代からの公民権運動の広がりを受けて、
80年代半ばのアメリカでは、
障害を持つ人の権利運動が盛んになりました。

当時のアメリカには、800万人を超えるともいわれている
ベトナム戦争の負傷兵が帰還していました。

また、自動車が普及した頃でもあり、
交通事故で負傷して障がいを負った人々が
アメリカ国内に多くいたことでしょう。

人権運動の高まりが
ユニバーサルデザインという考え方を後押しする中、
メイス氏は建築基準の改定などに力を注ぎ、
1998年にこの世を去ります。

彼は亡くなる10日前に、
ユニバーサルデザインの国際カンファレンスに登壇し、
講演をしたそうです。

その中で、障害物を排除する「バリアフリー」の考え方と、
マーケット主導型で、万人が利用しやすい設計をする
「ユニバーサルデザイン」とは、異なるものなのだ、
と会場に集まった人々に語りかけました。

障がいを持っている人を特別視せず、
万人にとって良いデザインを。

彼の志は、私たちがものづくりを考えるときに
「人の尊厳」に心を傾けるようにと、
語りかけてくるのです。

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