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かばんの修理に思うこと

数年前、長く愛用してきたパーティーバッグのハンドルを支えていた
留め金の一か所がはずれ、方々の修理店をあたりましたが、
「同じ金具が見つからず、お修理は難しい」
ということで、仕方なく、クローゼットにバッグを眠らせていました。

ところが、最近になって、
「とことん、かばんの修理をしてくれる工房がある」と聞き、
伺ってみることにしました。

兵庫県三田市の「山澤工房」というお店です。

修理のご相談に伺うと、
「バッグのハンドル部分の接続部分の金具を
もとの付け方と同じやり方ではめ込むこともできますが、
再び外れてしまう可能性があるので、
バッグに接着している四角い枠型の金属の上部に穴をうがって
小さなネジで固定する方法で修理をさせてもらえませんか」
とのご提案を頂きました。

お直しの期間は約1カ月、費用は約8千円ということで、
少し考えましたが、お気に入りのお品だったので、
お直しをお願いすることにしました。

さて、1ヵ月が過ぎ、「かばんの修理が仕上がりました」とのご連絡があり、
お店を訪れると、無事にハンドルのお直しが終わり、
もとの通りの美しいたたずまいに復元頂きました。かばん

接合部分を含めて、周辺の革の縫製をほどいたことを全く感じさせない、
見事な仕上がりです。かばん2

金属の枠部分を、金磨きの布で丁寧に拭くと、
失われていた光沢感が蘇ってきました。

まるで、かばんが「捨てずに直してくれて、本当にありがとう!」
と喜んでくれているような印象を受けました。

日常お世話になる持ち物には、人の役に立つべく生まれてきて、
用途を全うするための生命が吹き込まれているのを感じます。

これまで、ショッピングの折には商品の便利さや魅力と
販売価格のみを見て、商品を手に入れてきましたが、
修理代も含めた生涯価格を考えても手に入れたいだろうか?
ということを考えるようになりました。
現代は、安くて新しい品物を買い、
汚れたり壊れたりしたらすぐに捨ててしまうことも可能な世の中ですが、
それだけではあまりに寂しすぎると思うのです。

下駄の鼻緒のお直しや刺し子の繕い、割れた陶器の金継などで、
大切に身の回りのものと関わってきた日本人の古く良き伝統を、
私も日常に少しずつ、取り入れてみたいと思います。